セミナーレポート

ディレクターのスキルを広げる
実例で学ぶ!プロジェクトを前に進める提案テクニック

ディレクターのスキルを広げる 実例で学ぶ!プロジェクトを前に進める提案テクニック

公開 

去る2025年10月23日(木)、オンラインセミナー「ディレクターのスキルを広げる 実例で学ぶ!プロジェクトを前に進める提案テクニック」が開催された。

業界内でWebディレクターの需要が非常に高まり、人材不足が深刻化している。となれば必然的に、ディレクターに求められるスキルも高いものとなるだろう。そこで今回は株式会社NEXXT代表 幸野剛士氏をゲストに迎え、プロジェクトを牽引できるWebディレクターが身につけるべき「提案力」についてお話いただいた。

講師プロフィール

幸野 剛士(タケ)(KONO TAKESHI)
株式会社NEXXT代表 Webディレクター
1992年生。栃木県出身。複数の制作会社を経て2024年10月に独立。主に車、製造、金融といったtoB業界のWebディレクターとして活動中。「集まれ!Webディレクターの森」を主宰し、コミュニティ運営やオフライン・オンラインイベントを展開している。

提案に必要な4つの考え方

セミナーの冒頭、幸野氏は適切な提案ができるようになった場合のメリットについて、「プロジェクトがコントロールしやすくなる」「クライアントからも頼られるようになる」と説明した。では、どうすればそのような提案ができるようになるのか。それには、「現状把握」「課題発見」「解決策立案」「実行計画」の4つの考え方が必要だという。

幸野氏:たとえばクライアントから「うちのサイトは使いづらい」と聞いたとき、「実際はどうなのか?」と疑問を持つことが大切です。使いづらい原因がサイト側ではなく、閲覧する端末やネットワーク側にあることも考えられます。最適な提案をするために、まず「現状把握」に努めましょう。

図:必要な考え方、現状把握①:シチュエーションやデータ、お問い合わせ内容

次は「課題発見」だ。たとえば「サイトに掲載している資料が探しづらい」というクレームがあったとき、導線設計やサイトデザインの見直しを考える人も多いだろう。しかし、実際はサイトの導線設計に問題はなく、製品バージョンが複雑だったり、資料が膨大にあったりするケースも考えられる。「そもそもユーザーはどのようにサイトを使っているのか?」といった本質的な部分に立ち返り、表面的な要望の背景にある課題を見つけることが重要だ。

図:必要な考え方、課題発見②:表面的な要望の背景にある本質的な問題

幸野氏:課題を見極めたら、解決策を提案します。ただ、クライアントも予算が潤沢にあるわけではありません。とりあえず複数の案をクライアントに放り投げるのは、誠実な態度とは言えないでしょう。施策の内容だけでなく、担当者自身の立場や決算のタイミングなど、さまざまな状況を加味したうえで、「推奨したい案」を提示するべきだと思います。

図:必要な考え方、解決策立案③:複数選択肢の中からベストな提案

推奨したい案について、どういったステップで何を実行するのか、「実行計画」を伝えることも必要だ。担当者の立場によっては、上長など他の人間に相談をする必要も出てくる。「推奨する施策Aを11月から始め、2月末で終わったときに効果測定をし、同時に施策Bを開始する」といったプロジェクトの輪郭を整理し、担当者に伝えられると、予算承認なども下りやすくなる。

図:必要な考え方、実行計画④:段階的で実現可能なステップ

提案力を鍛える事例

次に幸野氏は、「提案力を鍛える5つの事例」として、自身が経験した事例について説明した。その中からいくつか紹介する。

まずはサイトリニューアルの案件。「ユーザビリティがよくないため改善したいが、ページ数が数千にわたるため期間と費用が膨大にかかることが予想され、これでユーザビリティが向上しなかったら取り返しがつかないから悩んでいる」と相談があったという。

幸野氏:費用がかかればそれだけこちら(制作受注側)の売上も伸びますが、そういう商売の仕方はよくありません。コストを抑える施策として、「代表的な1ページだけを対象に施策を打ちたい」と提案しました。「ユーザビリティがよくない」という判断自体も確かめたかったので、施策を打ったページをユーザーに評価してもらい、それを踏まえてリニューアルの方向性を決めましょうと提案したんです。リニューアル案は3案作成し、納得感が生まれるようにしました。

図:数千ページのフルリニューアル、一気に全部やると取り返しのつかないことになったりするよね?

クライアントからの相談を受けて提案をするばかりではなく、自主的に改善提案を持ちかけたこともある。あるLPの問合せ状況を見ているとき、幸野氏は「ほんの数パーセントだけ『このサービスは無料ですか?』という問合せが来ていたことに気づいた」という。

図:サイトの文章を『お問い合わせの内容』を見てリライトしませんか? 自主調査⇒状況

CVRは悪くないため、クライアントは特にそのLPを問題視していない。その状況で「改善したほうがいい」と提案するだけでは、受け入れてもらえないだろう。そこで幸野氏は、提案の前に調査を行った。

幸野氏:わざわざ「無料ですか」と聞くということは、業界的に「無料」が珍しいのかもしれない。競合他社の検索上位ページを改めて調べてみると、その2~3割は同様のサービスを有料で提供していたんです。クライアントのLPには無料であることを明記していたので、それが伝わるようにどう直すとより効果的か仮説も立てました。

調査結果を踏まえ、幸野氏は「クライアントのための提案」を心がけた。無料であることがよりアピールできれば、不要な問合せ対応が減り、潜在顧客への訴求も期待できる。しかも時間もコストもそこまで必要としない。「試す価値がある」と判断できるよう工夫した提案だった。

図:サイトの文章を『お問い合わせの内容』を見てリライトしませんか? 提案した内容

提案力を高めるために、今日から実践できること

セミナーの後半、幸野氏は「今日から実践できること」として、3つの観点を提示した。

1つめは「現在の案件で1つ小さな課題を見つけてみる」。どんなサイトにも課題はあるもの。「404は親切な設計か?」「コントラストは大丈夫か?」といった課題は改善提案に繋がるほか、「競合のサイトは新しい工夫を入れていないか?」も提案するきっかけになるという。

図:今日から実践できること①現在の案件で1つ小さな課題を見つけてみる

2つめは「現状使っているデータを吸い上げて確認する」。GA4やトラッキング、ヒートマップなどのデータを改めて確認し、「期待した導線でユーザーは遷移できているのか?」「ボタンはクリックされているか?」を確かめる。

幸野氏:「クレームの内容に対して競合サイトはどうなっているか?」も重要だと思っています。競合サイトではすでにできているのに、自社サイトではできないという状態であれば、それは明確な課題だからです。競合サイトではどうなっているか、しっかり見たほうがいいと思います。

図:今日から実践できること②現状使っているデータを吸い上げて確認する

最後は「競合他社のサイトを定期的にチェックする習慣をつける」。競合他社のサイトは、できれば毎日チェックするのが望ましい。最低でも、企業情報が変化しやすい四半期の変わり目には確認しておきたい。また、クライアントとの打ち合わせ前にチェックしておくと、「他のサイトではこうなっています」と話ができ、信頼にも繋がりやすい。

図:今日から実践できること③競合他社のサイトを定期的にチェックする習慣を持つ

セミナーの最後、幸野氏は「提案力を高めるための学習法」について語った。

幸野氏:アイスブレイクや喫煙室などで、できるだけクライアントと会話をするように心がけてください。こうしたとき、個人的にはあえてサイトのことは聞かないようにしています。「サイト制作以外で困っていること」から、提案は生まれやすいですね。また、クライアントの業績や企業発信、不祥事のニュースもしっかりチェックしましょう。何か問題が起きているときに提案をしても、「それどころじゃない」となりますから。

セミナーは参加者の質疑応答で締めくくられた。寄せられた質問からピックアップして掲載する。

新規のクライアントとはオンラインミーティングを行うことが多いです。幸野さんだったら、どのようにクライアントとの距離を縮めたり、課題を聞き出したりしますか?
こちらから会話の機会を作ります。

直接会いに行くかもしれませんね。前提として、僕はお客さんに気に入られるためだったらなんでもしたい人間なんです。Facebookで名前を検索して、釣りが好きだとわかったら釣りの話を合わせたりとか……ネットストーカーみたいですけど(笑)。
物理的に遠いとか、先方が会いたがらないような感じであれば、「10分15分でもいいので」と会話の機会をこちらから提案することが大切だと思います。断られたとしても、そういう前向きな姿勢を持っていることを示すことが、好印象に繋がると思います。
提案の際、費用対効果をどのように見積もられますか。施策で増加が見込まれるPV数や売上など、具体的な数字はどのような根拠を元に求めているのでしょうか。
「ここまではできるが、この先はわからない」と正直に説明します。

まず売上だけを軸に提案をしたことはありません。PV増=売上増とは限らないからです。季節やトレンドといった不確定な要素も絡みますし、「必ず売上が向上します」と謳うのは、逆に不誠実なことだと思っています。
PV数についても基本的には一緒ですが、年間や月間のPV数の遷移などからある程度仮説を立て、根拠をそれなりに出したうえで提案する、といった工夫はすると思います。「絶対この数字になる」という保証はないので、そこまで数字にこだわっていないのが正直なところです。「最低限ここまでは到達するが、そこから先はわからない」と、きちんと説明することが誠実な態度だと考えています。

編集部より - セミナーを終えて

幸野氏のセミナーは全編を通して、「本質的な課題」「本質的な提案」「本質的な価値」にこだわっていた。クライアントからの要望があっても、それを正面から受け取らず、本質的に何が起きているかを分析する。とりあえずの提案で済ますのではなく、本当にやる意義のあるものだけを提案する。こうしたクライアントに対する誠実な態度こそ、活躍するWebディレクターの基盤となるものだと感じた。

これからも、さまざまなゲストを招き、転職やキャリア形成を考えるうえで有益な情報をお送りする予定だ。ぜひ今後のセミナー内容にも期待してほしい。

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