セミナーレポート
デザイナー・ディレクター必見!SEOの基本と実例

公開 2025.5.20
去る2025年3月25日(火)、オンラインセミナー「デザイナー・ディレクター必見!SEOの基本と実例」が開催された。
デザイナー・ディレクターとして活躍されている方々から、コンテンツ作成に付随するSEO領域について関心があるという声を受けて開催された今回のセミナー。日頃からマーケティングやWebディレクションに携わっているマッチボックス運営スタッフ2人が登壇し、SEOに強いサイト構造の考え方やキーワード選定など、デザイナー・ディレクターが押さえておくべきポイントについて語られた。
講師プロフィール

- 本郷 孝太郎(KOTARO HONGO)
- 株式会社マイナビワークス マーケティング統括部
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大学で経済学を修了後、金融系アセットマネジメント会社に入社、対法人営業、対個人営業、マーケティング業務を経験。
その後、株式会社マイナビワークスにマーケターとしてジョイン。入社初年度でアフィリエイト経由でのセッション数約380%増を達成。また、社内エンゲージメントプラットフォーム運営プロジェクトのリーダーを拝名し、プラットフォームの社内定着率を10%未満から94%にまで向上させた。現在は、主に、Web/IT/ゲーム業界を専門とした人材紹介サービス『マイナビクリエイター』にて、サイト運営、SEO対策など幅広く担当。2023年10月から2024年3月においてorganic経由のsession数、約140%増を達成する。趣味でYouTubeやってます。

- 伊東 宏之(HIROYUKI ITO)
- シララ株式会社 代表取締役
https://sirara.co.jp/ - 1000ページ規模のECサイトのSEOや、医療機関・地域事業者向けのMEO施策など、Webディレクターとして多岐にわたるクライアントを支援。
SEOに強いサイトは「ユーザーファースト」を徹底している
SEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)とは、検索エンジンで自社のWebサイトを上位に表示させる施策を指す。では、そういった検索エンジンへの最適化を意図したメディア、つまりSEOメディアでは、一般的にどのようなサイト構造が求められているのだろうか。
本郷氏:1つは、カテゴリごとにディレクトリを分けること。軸となる大カテゴリがあり、それを深掘りする形で中カテゴリや小カテゴリを設けるのが基本です。もう1つは、リンク階層を浅くすること。リンク階層が深いページはユーザーがたどりにくいだけでなく、Googleからも評価されにくくなる遠因となります。そしてなにより、ユーザーにとって見やすいことが最も重要です。ユーザーファーストを徹底するように心がけましょう。

SEOメディアのサイト構造で、近年トレンドとなっているのが「トピッククラスター」だ。扱うトピックを包括的にまとめた「ピラーページ」を中心に置き、そこに各トピックの詳細を掘り下げた「クラスタページ」を内部リンクで結ぶ。こうしてコンテンツを戦略的にまとめることで、メディア全体や個々のページのSEO評価を向上させる施策だ。
本郷氏:ピラーページを大カテゴリ、クラスタページを中小カテゴリと捉えると、わかりやすいかもしれません。Webデザイナーについてのトピッククラスターなら、「Webデザイナー」というピラーページに各トピックの概要が記載され、そこから内部リンクで「スキル」「資格」「年収」といった、各トピックのクラスタページが結びつくようなイメージです。

さらに本郷氏は、SEOをはじめすべてのマーケ領域の業務において、「ペルソナ設計がとても大事」だと話す。ペルソナを設けるメリットは、「ターゲットを明確化して効果的な戦略を立てる」「チーム全体で認識を合わせてプロジェクトの方向性を一致させる」といったものが一般的だ。本郷氏はそれらを踏まえたうえで、「たった1人にすら刺さらないプロジェクトやサービスが、何千人、何万人に刺さるわけがない」とペルソナの重要性を語った。
本郷氏:私がペルソナを考えるときは、架空の人物の履歴書を作るようにしています。名前や年齢、性別をはじめ、出生地、学歴・職歴、自己PR、プライベートの趣味に至るまで、人物像を徹底的に作り込むんです。「学生時代の部活の経験が折れにくい思考に繋がっている」といった、内面的な部分まで言語化します。ペルソナの解像度を高めることで、施策やクリエイティブの解像度も高まるはずだと考えています。

キーワード選定やコンテンツ制作など、ディレクターに向けたSEOのノウハウ
続いて「ディレクター向け!ちょっとマーケ寄りノウハウ」と題し、ディレクターに向けたSEOのノウハウが語られた。SEO施策において、ディレクターの頭を悩ませるのが効果的なキーワードの選定だろう。ここで役立つのが、サイト構造で登場したトピッククラスターだ。
本郷氏:ピラーページ(大カテゴリ)にあたる大きなキーワードを軸に、それらを構成するロングテールキーワードを順々に攻めていくようにします。サイトの全体像を意識しながら、ディレクトリに沿ったキーワード選定ができるので、闇雲に攻めるよりも方向性をしっかり保てるのです。キーワード選びに悩む場合は、Googleの「キーワード プランナー」などのツールを活用するのもよいでしょう。

また、記事を制作する場面では「E-E-A-T」と「PAA」を意識したほうがよいという。
・E-E-A-T
GoogleがWebサイトやコンテンツの品質を評価する基準であり、経験(Experience)、専門性(Expertise)、権威性(Authoritativeness)、信頼(Trust)の頭文字をとった言葉。経験(ユーザーの声など)、専門性(識者の見解など)、権威性(業界内でのメディアの地位など)を記事の中で担保することで、ユーザーからの信頼を得やすくなり、SEOの面でも検索エンジンからの評価が向上する。
・PAA
PAA(People Also Ask)とは、検索結果に「関連する質問」「他の人はこちらも検索」と、検索キーワードに関連する質問が表示される機能のこと。このPAAに表示される情報を意識し、あらかじめサイト内のコンテンツにそれを組み込んでおくことでユーザーの便益が上がり、訪問にも繋がる。
伊東氏:実際の現場で、E-E-A-Tの重要性を実感することはありますか?
本郷氏:ピラーページ(大カテゴリ)にあたる大きなキーワードを軸に、それらを構成するロングテールキーワードを順々に攻めていくようにします。サイトの全体像を意識しながら、ディレクトリに沿ったキーワード選定ができるので、闇雲に攻めるよりも方向性をしっかり保てるのです。キーワード選びに悩む場合は、Googleの「キーワード プランナー」などのツールを活用するのもよいでしょう。

さらに、E-E-A-Tとも関連する要素として監修者情報などの「構造化データ」をhtml内に設定することも推奨した。
本郷氏:構造化データを設定すると検索結果に「リッチリザルト」として表示されやすくなります。これにより、ユーザーの情報認知度が上がり、Webサイトへの来訪を促せます。また監修者などの情報によって、記事の専門性が高いことを正しくGoogleに認識させることができます。
誰がどのような環境で検索しているかを考慮したデザインにする
セミナーの後半は「デザイナー向け!デザインに対するポイント」と題し、SEOを意識したデザインについて語られた。デザイナーは、トピッククラスターの内容をデザインに落とし込むだけでなく、誰がどんな環境で検索しているかも考慮してデザインを決める必要がある。
本郷氏:たとえば、ペルソナが「接客業の20代女性」で、土日の22時に自宅で検索をしているなら、仕事終わりに細かい文字がびっしり並んだ記事なんて読みたくないですよね。スマホで検索するでしょうから、知りたい情報はファーストビューに置くべきですし、誤タップを防ぐために内部リンクは近すぎない方がいい。
伊東氏:これは「とにかくモバイルファーストにすればいい」という話ではないですよね。たとえばデスクワーク中に検索をすることが多いペルソナなら、パソコンで見ることも想定したほうがいいわけですし。
本郷氏:その通りです。どのような環境でどのデバイスを使って検索するかは、ペルソナによって変わります。これを踏まえたうえで、ユーザーファーストを徹底したデザインを心がけてもらえたらと思います。

デザインにおいて、ビジュアルや動作性は主観的な評価になりがちだ。そこで本郷氏は「客観的な評価軸を設けることが大切」と話し、Googleが提唱する「コアウェブバイタル(Core Web Vitals)」について説明した。これはWebサイトの健全性を示す指標であり、「LCP」「INP」「CLS」の要素で構成される。
・LCP(Largest Contentful Paint):最大コンテンツの読み込み速度
・INP(Interaction to Next Paint):Webページの応答速度
・CLS(Cumulative Layout Shift):ページの視覚的な安定性
本郷氏:コアウェブバイタルは「CrUX Dashboard v2」というサイトで、サイトのレポートを確認できます。読み込み速度が遅ければLCPの数値が悪くなりますし、レスポンシブデザインを読み込んでいる最中にレイアウトが変動するとCLSの数値が悪くなります。「何となく読み込みが遅い」と感覚に任せるのではなく、客観的な数値で評価できると、チーム内の議論もスムーズになります。たとえば凝ったビジュアルがこれらに影響する場合もあるので、デザインの段階から意識することが重要です。

最後に、本郷氏は今日のセミナーの内容をまとめた。
本郷氏:ユーザーファーストを徹底し、わかりやすさを最優先に考えること。チーム全体で共通のペルソナを持ち、それを常に意識して施策に取り組むこと。そして、最新の技術を安易に取り入れるのではなく、「このサイトにとって本当に必要なものか」を意識すること。この3つを忘れずに、SEOに取り組んでもらえたらと思います。の後はアクセシビリティに関する相談も増えているという。時代やトレンドによって、依頼される内容も変化するのだ。

セミナーは参加者の質疑応答で締めくくられた。寄せられた質問からピックアップして掲載する。
- トピッククラスターについて質問です。なぜこの形を目指すと、SEO価値が高まるのでしょうか?
- 「ユーザーファースト」と「専門性」がポイントです。
本郷氏:ユーザーにとってわかりやすい、というのが大きいですね。サイト構造が視覚的にわかりやすいので、ユーザーが知りたい情報にたどり着きやすい。さらに、各トピックを掘り下げることで「このサイトは○○について詳しい」という認識をユーザーに与えられます。そうなればユーザーファーストかつ専門性が高いサイトになるので、結果的にGoogleに評価されやすくなるのです。 - 設計したペルソナをベースに企画を進めてよいのか迷っています。今日のセミナーではペルソナの履歴書を作っていましたが、完成したペルソナの信憑性はどのように担保されているのでしょうか。
- チームや当事者からのフィードバックを受けるとよいでしょう。
本郷氏:1人で考えすぎず、ペルソナについてチームメンバーと話し合うことが大切です。メンバーと共通認識をすり合わせて、「今回のペルソナはこの人だよね」と合意形成を図ることが、信憑性にも繋がるのではないでしょうか。
伊東氏:当事者からのフィードバックも大事ですよね。ターゲットがデザイナーなら、社内のデザイナーに見てもらうといいでしょう。最近はインタビューのオンラインサービスも充実しているので、ユーザーインタビューを通じて解像度を高めるのもよいと思います。
本郷氏:私はAIの力を借りることもありますね。たとえば「日本滞在中のアメリカ人10代女性」といった、自分では想像が及ばないようなペルソナの場合は、AIに背景などを伝えてペルソナを作ってもらうと便利です。ただ、AIに任せるのはあくまで最初のベースのみ。施策の初動をぐっと早めるためにAIを活用し、そのあとは、人の力で細部を詰めていくことがやはり大事ですね。
編集部より - セミナーを終えて
SEOという言葉に、「とにかくキーワードを散りばめて検索に引っかかるようにする」といったイメージを持たれている方も多いかもしれない。しかし今回のセミナーで語られたノウハウは、ユーザーファーストを第一に考え、知りたい情報をわかりやすく提供することを主眼に置いている。伝えたい情報をユーザーに確実に伝える、というサイト本来の目的を追求すれば、おのずとSEO施策にも繋がるということだろう。
これからも、さまざまなゲストを招き、転職やキャリア形成を考えるうえで有益な情報をお送りする予定だ。ぜひ今後のセミナー内容にも期待してほしい。