セミナーレポート

実録!
デザイナーがキャリアチェンジしたいときのポートフォリオ作成法

実録!デザイナーがキャリアチェンジしたいときのポートフォリオ作成法

公開 

去る2024年10月22日(火)、オンラインセミナー「実録!デザイナーがキャリアチェンジしたいときのポートフォリオ作成法」が開催された。

デザイナーが転職活動を行ううえで、必要不可欠なポートフォリオ。しかし、「どんな情報をまとめて作ればよいのかわからない」「作ってみたが書類選考が通らない」という声も多い。そこで今回は、魅力的なポートフォリオを作成するためのセミナーを開催。株式会社カオナビでデザイナー・マーケターとして活躍中の池田萌氏をゲストに迎え、ポートフォリオを作成する際に持つべき視点について語られた。

講師プロフィール

池田 萌(IKEDA MOE)
株式会社カオナビ カスタマーマーケティング部 / 小中学生向けデザインスクール 講師
株式会社カオナビでデザイナーとして参画し新規顧客獲得のためのマーケティング活動に貢献したのち、入社時からの主務と並走して取り組んできたCS関連の仕事を認められ、カスタマーマーケティング部に配属。今後はデザインにとどまらず貢献する。副業では2024年からベネッセ チャレンジスクールにて講師を務める。現在ママ3年生。

ポートフォリオを作る前に、コミュニケーションの「入口」と「出口」を考える

セミナーは池田氏の「なぜポートフォリオを作るのか」という問いから始まった。池田氏によれば、ポートフォリオは求職活動における道具でしかなく、会話のきっかけを作る「コミュニケーションツール」であるという。では、求職活動でどういう会話をして、どういう結末を迎えたらハッピーエンドだと言えるだろうか。

池田氏:たとえば「○○な部署・企業に」「△△として認められて」起用・採用されるというゴールが考えられるでしょう。ポートフォリオで自分のスキルをまとめる前に、まずは目指すべき会話の「出口」を決めます。

ゴール=会話の出口を決めよう

セミナーでは、かつて池田氏が社内でキャリアチェンジをした際に設定した「出口」が例として示された。池田氏は、それまでのデザイン職から、企画・ディレクションといったビジネス寄りの仕事にシフトしたいと考え、「顧客と関わる部署に、企画屋として認められて配属される」というゴールを描いた。ゴールを描く際は「その業界やポジションを選んだ理由がきちんと言語化されているとなおよい」と話す。

出口を決めたあとは、会話のきっかけとなる「入口」を考える。相手に興味を持ってもらうために、池田氏は「自分の手札=キャリア」を棚卸しすることをすすめた。

池田氏:過去に関わった案件の内容や、そのときの役割を書き出します。スプレッドシートなどで一覧にしておくとよいですね。書き出したら、先ほど設定したゴールに照らし合わせて、本命の相手にメインで訴求できるものを「一軍」、本命以外の相手に訴求できるものを「二軍」、その他を「三軍」にレベル分けします。相手によって一軍となりうるキャリアは変わるので、とにかくたくさん書き出しておくことが大事です。

書き出したものをレベル分け

さらに“刺さる”ポートフォリオを作る準備として、「相手の業界を調べつくしましょう」と池田氏は語る。募集要項や代表者のブログ、志望するポジションに近い人のSNSなどを読み、業務内容や理念などを頭に入れておく。本当に自分にフィットした会社であるか改めて確認する意味でも、ポートフォリオのターゲットを正しく理解することは重要だ。

ポートフォリオを作る際に陥りやすい罠とは?

次に池田氏は、入口と出口を繋ぐ「会話の設計図」ついて説明した。

まずは、ポートフォリオの利用シーンを具体的にイメージする。そのポートフォリオは誰が見るのか、誰に響けばよいのか、その人物はポートフォリオを紙で見るのかWebで見るのか……。利用シーンをイメージすることで、ピックアップする実績や全体の構成など、注力するポイントが変わってくるという。

池田氏:「担当者がどんな観点でポートフォリオを見るのか」も大事なポイントです。そこでおすすめなのが、ポートフォリオ作成サービス「MATCHBOX(マッチボックス)」の各項目を見ること。「制作のポイント」など、重視されがちな観点が項目として挙げられていますし、入力欄にはグレーの文字で例文が細かく書かれています。これを参考に自分で空欄を埋めてみると、アピールポイントが整理できると思います。

みっちり書かれたプレースホルダ-

池田氏が社内でキャリアチェンジをした際は、自身のセールスポイントに対して予想される質問を考え、「想定問題集」を作ったという。

池田氏:想定問題集を作り、自分の言葉で実績をしっかり説明できるように準備しておきます。質問の回答がアピールに繋がるように仕込んでおくわけです。アピールによる「納得感」と、その人ならではのストーリーによる「必然性」を感じてもらうことが、面接を成功させる大事なポイントだと思っています。

面接のパッケージ化

一方で、ポートフォリオを作る際に陥りやすい罠として、池田氏は「卒業アルバム制作のようになりやすい」ことを挙げた。実績を振り返るうちに「これ懐かしいな」「これ頑張ったから入れておこう」と、思い出の作品をどんどん追加してしまい、自分本位なポートフォリオ=卒業アルバムができあがってしまうという。

そこで池田氏は、これまで考えてきた入口から出口までのストーリーを振り返るためのシートを用意した。

これまで考えてきた入口から出口までのストーリーを振り返るためのシート

池田氏:書き込んだシートを目に見える場所に貼ることで、「自分はこの人と話をしたいんだった」と立ち返れるようになります。「期限が迫っているのに何も書けない」というときも、このシートをネタ帳として使ってもらえたらと思います。

プロセスを重視する「頭でっかち系デザイナー」の戦い方

セミナーの終盤は、池田氏が抱えるある悩みにスポットを当てた。池田氏は自身を「頭でっかち系デザイナー」だと話す。

池田氏:私はそこまでグラフィックに強いわけではなく、企画やビジネスサイドのほうに興味がありました。ヒアリングや要件定義に力を入れたり、データドリブンで課題定義をしたり、効果測定をしたり……と、プロセスを重視してきたので、アウトプットだけを並べたポートフォリオでは、キャリアを正しく評価してもらうことが難しかったんです。

頭でっかち系デザイナーの弱み

では、ポートフォリオだけでは表現できない強みを、どのように表現すればよいのか。池田氏が「頭でっかち系デザイナーの戦い方」として選んだのは、補足資料を添えることだった。池田氏はプレゼンテーションツールを使い、これまでの業務の内訳や、自己紹介、異動先でやりたいこと、Q&Aをテキストでまとめた資料をポートフォリオとは別に作ったという。

池田氏:補足資料を作るにあたり、普段Figmaを使い慣れているデザイナーにおすすめなのが「Figma Slides」です。Figma が提供するプレゼンテーションツールなので、Figmaの操作感のままスライドが作れますし、Figmaで作った図をコピペすることもできます。私が補足資料を作ったときも、とても重宝しました。

業務内訳

最後に、池田氏はMATCHBOXの「オファー機能」について触れた。オファー機能とは、MATCHBOXで作成した経歴やポートフォリオを、MATCHBOX利用企業に直接見てもらい、オファーをもらえる機能。「職務経歴書やポートフォリオの準備が整った後、つまり万全の状態にしてからオファー機能を登録したい、という人も多いはず」と池田氏は話す。

池田氏:気持ちはわかりますが、転職の場合、とにかく目に触れてもらう機会を増やしたほうが得策です。完璧なものができるまで時間をかけるより、自分の「最低点の合格点」を満たしたら、すぐに登録してみるのがおすすめです。あとは、適宜アップデートをしていけばよいと思います。

セミナーは参加者の質疑応答で締めくくられた。寄せられた質問からピックアップして掲載する。

転職で志望する企業が、業界でどのようなポジションにいるのか、どのように調べればよいでしょうか。
人に聞いてみるのが確かです。

私が最後に転職したのが4年前なのですが、そのときは転職エージェントに話を聞いたり、書店で業界地図を買って読んだりしていました。今転職するとしたら、人に聞くことを優先するかもしれませんね。志望する企業の人に直接話を聞くのがベストですが、そこに近い会社でも競合分析をしているでしょうから、情報が得られると思います。最近はブログやnoteで発信をする企業も多いですから、企業名で検索してみるのもよいでしょう。
和装や着物などのデザイン、プロダクトの仕事をしていました。転職にあたり、まったく違うジャンルの会社(スポーツ系)のデザイナーを志望しています。ポートフォリオを作ろうとスタートしたのですが、これまでの実績のどこを強みに書けばよいか悩んでいます。
共通している部分をアピールしましょう。

まったく違うジャンルだとしても「ここは共通している」という部分をアピールできればよいと思います。たとえば着物とスポーツ用品なら「人が身に付けるものが好き」「人が心地よく過ごせるようにしたい」といった点は共通して言えますよね。これまでの着物の仕事で「こういうところに気を配ったことで動きやすくなった」みたいなことが言えたら、スポーツ系の企業にもとても魅力的に映るのではないでしょうか。自分がどう役に立てるのかをしっかり言語化できれば、よい結果が生まれそうな気がします。

編集部より - セミナーを終えて

ポートフォリオを作ろうとするとき、私たちは「自分はどんなものが作れるのか」「自分はどんな人間なのか」を表現しようと思いがちだ。しかし池田氏は、徹底的に「ポートフォリオを見せる相手」のことを考える。自分が望む結果に導くために、相手に何を見せればよいか。それが決まって初めて、ポートフォリオの内容も具体化するのだ。ポートフォリオは自己表現の道具ではなく、あくまで転職を成功に導く手段であることを、改めて教えられたセミナーだった。

これからも、さまざまなゲストを招き、転職やキャリア形成を考えるうえで有益な情報をお送りする予定だ。ぜひ今後のセミナー内容にも期待してほしい。

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